大判例

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名古屋高等裁判所 昭和59年(ネ)268号 判決

控訴人

小牧岩倉衛生組合

右代表者管理者

小牧市長

佐橋薫

右訴訟代理人

石原金三

塩見渉

花村淑郁

杦田勝彦

石原真二

右指定代理人

畑中英明

外三名

被控訴人

篠田徹

外一〇五名

右被控訴人ら訴訟代理人

浅井得次

今井安栄

小島隆治

佐藤典子

名倉卓二

被控訴人

長谷川由一

主文

原判決中控訴人敗訴の部分を取り消す。

被控訴人らの予備的申請を却下する。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人は、主文と同旨の判決を求め、被控訴人長谷川由一を除くその余の被控訴人らは、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。被控訴人長谷川由一は、公示送達による呼出を受けたが、当審口頭弁論期日に出頭しない。

二  当事者の主張は、次のとおり訂正・付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(訂正)

1  原判決B一一丁表二行目の「締結を予定する」を「締結した」に改める。

2  同B一一丁表六行目の「(5)」を「(4)」に、一〇行目の「(6)」を「(5)」に、同B一二丁表一〇行目の「(7)」を「(6)」に、同B一三丁裏七行目の「(8)」を「(7)」にそれぞれ改める。

3  同B一九丁表九行目冒頭の「(四)」を「(三)」に、同B三三丁表六行目冒頭の「(五)」を「(四)」にそれぞれ改める。

4  同B二四丁裏一〇行目冒頭の「2」を「z」に、同B二八丁表三行目の「(de/dz)」を「(dθ/dz)」に、七行目の「d\dz」を「dθ\dz」に、同B二九丁裏三行目の「疎乙第五五号証の二一六六頁」を「疎乙第五五号証の二の一六六頁」にそれぞれ改める。

5  同B三六丁表一〇行目から同B三七丁表八行目までを削除し、同B三八丁表一一行目の「進めている」を「進めた」に改める。

(控訴人の付加した陳述)

1(一)  小牧市と岩倉市は、近時名古屋市の定住圏内の近郊都市として、ベッドタウン化が急速に進み、人口増が著しく、このため家庭ごみの発生量は増加の一途をたどつており、市民の消費生活の向上がこれに拍車をかけ、現在、両市において収集する家庭ごみ量は、一日一二〇トン以上に達している。本件焼却場は、かような事態に対処するため、八二億余円の巨額の費用を投じて建設したもので、一日当たりの焼却能力三〇〇トンという、中小の地方自治体としては十分に大きな規模を備え、堅固な鉄骨鉄筋コンクリート造りで、完全密閉のできる建屋内に現時点における最高水準の技術を結集した設備であり、焼却のすべての工程が自動化され、中央制御室で遠隔操作のできる集中管理方式を採用し、各種データ処理にはコンピューターを導入して、二基の焼却炉が最大稼動するという最悪の煙源条件においても、別表(1)記載のとおり、その排出濃度は大気汚染防止法等の排出基準を大きく下回つている。

(二)  現況において、小牧・岩倉両市における家庭ごみ量は一日一二〇トン程度であるから、本件焼却場は、当面四〇パーセント程度の稼動となることが見込まれ、したがつて、実際の大気汚染物質の排出量は、最大稼動時の半分以下の値になることが予想される。そして、本件焼却場は、小牧市の北東部に位置し、市内で最も人口密度が低く、事業活動はほとんどなく、交通量も少なく、したがつて、バックグラウンド濃度も極めて低いのである。

(三)  このような本件焼却場の公害防止装置と、当地域のバックグラウンド濃度の状況からすると、本件焼却場の操業によつて環境基準を超える大気汚染の生ずるようなことはありえないことであるが、控訴人は、これを確認するため、エンゲル・フェルト社による環境影響調査、日本気象協会東海本部(以下「気象協会」という。)による拡散実験による環境影響調査及び大阪府立大学伊藤正三教授の指導による拡散予測を行い、公害発生のおそれのないことを明らかにした。なお、右気象協会が実施した拡散実験は、被控訴人らが公害発生の最も危険性があるとして危惧を抱いている大気逆転層解消時を選んで実施されたものであり、また、同協会は、昭和五八年一一月五日から同月一一日まで本件焼却場に近接する老人ホーム小牧寮の敷地内において大気質現況調査を行つたが、その結果は別表(2)記載のとおりであり、各大気汚染物質の現況濃度は環境基準に比して大幅に低い値を示している。

2  控訴人は、昭和五九年九月二四日本件焼却場の試運転を始め、同年一二月二二日から本操業を開始しているが、同年七月一日に気象通年調査を開始したのをはじめとして、右操業による公害の発生を未然に防止すべく、種々の措置、調査等を積み重ねてきており、これにより将来にわたり右操業による公害の発生を防止できるシステムが万全なものになるとともに、その調査結果からも、本件焼却場の操業により被控訴人らが危惧するような公害、殊に排出ガスによる環境汚染の生じる危険性のないことが現実に明らかとなつている。すなわち、

(一) 公害防止システムの充実

(1) 公害防止条例

控訴人は、昭和五九年八月八日、組合議会において、「小牧岩倉衛生組合環境センターの公害の防止に関する条例」を可決・制定し、同月一三日、これを公布した。同条例は、周辺住民の健康で快適、かつ良好な環境を保全することを目的とし、本件焼却場の操業に伴なう公害の防止に関し必要な事項を定めることにより、控訴人において、環境保全がその重大なる責務であることを自覚し、公害防止に向けて自らの行動を自己規制するものである。

(2) 公害防止協定

控訴人は、野口区等本件焼却場の周辺地域との公害防止協定の早期締結に努め、協議・交渉を重ねた結果、昭和五九年一二月一五日、野口区のみならず、周辺の林区及び大山区とも合意に達し、愛知県小牧保健所長立会いのもとに右三地区との間でそれぞれ公害防止協定を締結するに至つたものであり、これにより、本件焼却場周辺区域の住民との間においても、本件焼却場の操業問題は円満な解決をみた。

右協定書においては、前記公害防止条例第三条に基づき策定・公表された「公害防止計画」と同一内容の協定値及び各種測定を控訴人において遵守若しくは実施すべき旨協定されるとともに、本件焼却場の操業に伴う公害の発生を防止するため、管理委員会の設置、ごみの分別収集化など各種のシステムが導入され、これらが機能することによつて、右公害防止はより万全なものになつた。

(二) 排出ガス中の大気汚染物質に関する調査・測定結果とその評価

(1) 操業前の調査について

控訴人は、従前主張したとおり、昭和五八年一一月九日、気象協会に委託して拡散実験による調査を行い(以下右実験を「第一回大気拡散実験」という。)、その報告書の提出を受けているが、更に、気象協会に委託して、気象条件の異なる昭和五九年八月二八、二九日の両日、本件焼却場を中心に周辺二キロメートル圏内を対象として、トレーサーガスによる拡散実験(以下「第二回大気拡散実験」という。)を実施し、その実験結果に基づきプルーム式拡散式を用いて本件焼却場の操業時の大気汚染濃度を推定した報告書(疎乙第八九号証)の提出を受けた。その具体的な推定値は、別表(3)記載のとおりであり(同表には第一回の報告書の推定値も併記する。なお、同表に掲げた数値は単独二炉の最大稼動時のものであるところ、当面は一炉稼動であるので、実際には右数値の二分の一が推定値となる。)、従前と同様、大気汚染推定濃度は、各汚染物質とも環境基準を下回つているとの結論を得た。

右二回にわたる拡散実験による推定値は、各汚染物質につきいずれも国の定めた環境基準等の数値をはるかに下回るものであつたが、各推定値算出が科学的に正確性を裏付けられた方法で行われたものであることに加え、それが気象条件の異なる時期に二度、逆転層(通常高濃度汚染の発生が懸念される。)の形成・解消や、風向等の気象条件にも留意して行われた現地における実験の結果に基づくものであることを考慮すれば、右の各推定値の信頼度は高いものというべきである。

(2) 操業後(試運転中を含む。)の調査について

(イ) 排出ガス中の大気汚染物質濃度測定

(a) 自動連続測定

控訴人は、本件焼却場内に設置された排出ガス自動連続測定装置によつて、本件焼却場から排出されるガス(誘引通風機出口のもの)中に含まれる各大気汚染物質の濃度(以下「排出濃度」という。)を常時、測定・把握している(ただし、ばいじんについては自動連続測定が困難であるので後記の手分析測定によつている。)。昭和六〇年一月分については別表(4)記載のとおりであり、その結果によれば、窒素酸化物、二酸化硫黄及び塩化水素の濃度は、前記公害防止協定書中で、控訴人が遵守すべき限度として各汚染物質ごとに定められている数値を上回ることが一度もなかつた。

(b) 定期測定

控訴人は、(a)の測定に加えて、月一回(前記公害防止協定においては年四回とされているが、さらに確実性を期するため。)の割合で、株式会社環境公害センター等に委託して、本件焼却場の煙突内の排出濃度につき手分析による測定を実施しているが、その結果(昭和六〇年一月〜三月分)によれば、ばいじんの濃度は常に定量限界未満であり、二酸化硫黄、窒素酸化物及び塩化水素の各濃度も、いずれも前記排出基準についての協定値を大幅に下回つているものである。また、水質、騒音、振動及び臭気についても、それぞれ本件焼却場の引渡性能試験実施時に測定(水質については本操業開始後も月一回測定)が行われたが、いずれも、これらにつき定められている環境基準や協定値を下回る結果が得られている。

(ロ) 環境濃度(大気質)測定

(a) 自動連続測定

控訴人は、気象協会に委託し、昭和五九年九月二二日から一か年、二四時間自動連続環境濃度測定器を野口区域内の一固定点に設置し、二酸化硫黄、二酸化窒素、塩化水素及び浮遊粒子状物質について自動連続測定を実施し、常時、大気汚染状況を監視しているが、現在までの測定結果によれば、二酸化硫黄、二酸化窒素、塩化水素のいずれも環境濃度は常に環境基準や協定値を大幅に下回り、しかも、本件焼却場稼動時と非稼動時との間に有意的な差異を見出し難く、本件焼却場による大気汚染への影響が極めて少ないことを示している。浮遊粒子状物質についても同様であり、ただ、昭和五九年一二月一日及び同月九日に一時環境基準値を超えたことがあるが、これは本件焼却場が稼動していなかつた時期のものであつて、本件焼却場の操業との間に有意的な関連性はない。なお、右自動連続測定期間の中には、気象通年調査において、高濃度汚染が発生しやすいとされている逆転層、弱風等の観測された日が含まれており、そのような拡散の悪条件下にあつても実測の環境濃度がすべて環境基準や協定値を下回つていたことになる。

(b) 特別観測

控訴人は、気象協会に委託し、環境濃度の特別観測として年四回(春・夏・秋・冬)本件焼却場周辺の九地点(うち二地点は風向に応じ移動させる。)において調査を実施し、四八時間連続して二酸化窒素、二酸化硫黄、塩化水素の各濃度を測定する予定になつているが、秋季(昭和五九年一一月)及び冬季(昭和六〇年一月)の測定の結果によれば、右各物質の測定値はすべて環境基準や協定値を大幅に下回つている。

(3) 各調査等の評価

(イ) 実測値の信頼性

操業開始後における右各実測の結果は、その測定主体、測定方法等からみて、客観的に極めて信頼性の高いものであることが指摘されなければならない。すなわち、右の各実測は、いわゆる機械装置によるか、あるいは、控訴人とは別個の専門的知見・技術を有する団体等により行われているものであつて、そこに作為や誤謬の入り込む余地は考えられない。また、右の各実測は、排出ガス濃度測定と環境濃度測定、連続測定と定期一斉測定、自動測定と手分析測定等を併せ行うことにより、いわゆる測定の「もれ」や「偏り」を排除する方策が十分に講じられたところでなされているものである。

(ロ) 環境基準等との差が顕著であること

排出ガス中の各大気汚染物質についての推定値や実測値が環境基準や協定値を満足していることは既述のとおりであるが、更に、これらが環境基準や協定値に比し著しく低い値にとどまつていることは、排出ガスによる周辺への影響が現在までのところゼロに等しいという意味でももちろん重要であるが、加えて、今後、本件焼却場の操業に関する種々の条件に変化が生じ、排出ガス中の各大気汚染物質の濃度が上昇するような事態が生じても、なお、容易に環境基準等を満足しうる「余裕のある」状態が保たれ、将来における公害発生の危険性が全くないことが明らかにされたものとして、評価されるべきである。

(ハ) アセスメントの相当性

右各実測値が明らかになつたことにより、控訴人が本件焼却場の操業に関しこれまで行つてきたいわゆる事前のアセスメントは、その方法も含め妥当なものであつたことが確認されたものというべきである。すなわち、アセスメント自体、事前の予測としての限界のあることを念頭に置いたとしても、排出ガス中の二酸化硫黄をはじめとする複数の各大気汚染物質の環境濃度について、いずれも操業前の推定値と操業後の実測値とが全体としてよく符合しており、他方、右実測値の測定も、前述のとおり測定にからむ「もれ」や「偏り」を排斥するため、各種の方法を併用する等万全の措置をとつた上での値であること等、その測定値が将来とも十分予測するに足る信頼性の高いものであつたことからすれば、単に控訴人の実施したアセスメントが結論において正しかつたばかりでなく、その方法においても相当なものであつたことが裏付けられたというべきである。

3  アセスメントの不備のみを理由に、本件焼却場のような施設について操業の差止を求めることは許されない。現行法上、二、三の個別法において事業者に環境アセスメントの義務を課しているものの、ごみ焼却事業について、この義務が認められるべき法的根拠は見い出せず、このことは、裏を返せば立法者において、右個別法によつてアセスメントを義務付けられている各事業に比し、ごみ焼却事業については排出規制のみで十分であると理解されていることがうかがわれるから、被害発生の蓋然性について、その存在を認むべき証拠や経験則がないのに、環境アセスメントの不備のみを理由に差止めを許容することはできない。

これに対し被控訴人らは、建設中は一年ないし二年にわたりアセスメントを実施する必要があると主張するが、例えば通年(一年間)にわたり現地調査を行うにしても、いかなる調査方法によつて、いかなる頻度で行うかといつた、その具体的な方法については全く言及していない。また、被控訴人らは、本件焼却場建設地が特殊な地形にあるとか、複雑な局地気象が想定できるなどと強調して、いわゆる現地における通年の気象調査の必要を述べている。しかしながら、日々変化して止まることがなく、年ごとの比較においても較差のある気象条件について、事前の予測は、あくまで予想の域を出ず、おのずから限界があり、現地における通年の気象調査を過大評価することはできない。

したがつて、ごみ焼却場において、公害防止のため肝要なことは、気象資料をいたずらに克明に調査して、拡散計算等をして事足れりとするのではなく、公害防止装置を十分強化するとともに、操業後においても常時環境濃度を観測し、それに応じて、適切な対応ができる体制を完備することにある。ちなみに控訴人は当初から操業後の現地における環境濃度を常時観測し、それに応じ適切な処置を執ることを約束してきたものであり、かつ、前述したとおり、現に右約束を実行しているものである。

4  被保全権利について

差止請求の根拠としての人格権あるいは環境権なるものは、実定法上の根拠を欠き、その内容が全く不明確であるばかりでなく、現在の権利体系ないし私法秩序の中における位置付けも明らかでないから、たやすくこれを承認することは、法的安定性の見地からみて、許されないところである。

5  保全の必要性について

(一) 被控訴人らが健康被害発生について主張するところは、被控訴人らの単なる危惧に過ぎないものというべきであるが、仮に百歩譲つて、本件焼却場の操業に伴つて強度の逆転層のヒューミゲイションの強風時のダウンウオッシュといつた現象により大気汚染物質の着地濃度が高くなつたとしても、年間を通じてその発生頻度はごく稀少と考えられるのであり、その継続時間も極く短時間に過ぎないから、これら現象の存在の故をもつて直ちに着地濃度が常に環境基準値を超えて危険な状態になるものではない。したがつて、机上計算によつて着地濃度が一時的に基準値を超える場合がありうるとしても、直ちにすべての操業を禁止すべき必要性があるとは到底いえないものである。

(二) 控訴人は、前述したとおり、本件焼却場を操業するにあたつて、被控訴人らの住居地を含めた野口住居地域に二四時間自動連続環境濃度測定器を設置し、常時大気汚染状況を監視し、もし万一操業に起因して前記大気汚染物質が環境基準等を超えるような事態が発生したとしても、焼却操業の調整、気象現象を考慮した操業の一時停止、その他所要の措置をとるべく予定し、更に、前記公害防止条例に基づき策定した公害防止計画の中において、大気汚染についての監視、測定を義務づけるとともに、同条例において、本件焼却場の操業に伴つて排出されるガス等が公害防止計画に定める排出等の基準に適合しなくなつたときは、速やかに操業を縮小し、又は停止する等必要な措置を講じなければならないものとされている。このような操業後の環境モニタリングシステムを考慮に入れるとき、公害物質除去装置として最新鋭の機器を備えた本件焼却場を全面的に操業禁止とする必要性はないものといわなければならない。

(被控訴人長谷川由一を除くその余の被控訴人らの付加した陳述)

1  気象協会の第二回大気拡散調査報告書について

(一) 右報告書の大気汚染濃度の推定方法は、本件に即した内容となつておらず、いずれの汚染物質とも大気汚染推定濃度が環境基準等を下回つているとの結論は、何らの科学的正当性を有しないものである。すなわち、右報告書は、有効煙突高をコンケウ式から高く想定し、大気拡散を大きく捉えてこれを排出濃度としているが、一般に比較的小さな煙源の有効煙突高については、平地の場合でさえも、コンケウ式はやや高めの評価をし、ホランド式は低めの評価をするといわれており、本件のように実際に山より低いところに煙突があるような場合に、コンケウ式やホランド式を適用することは適切でなく、煙は煙突から出ても、形として上にあがらず、むしろ逆に下へさがつてくることを想定しないと、計算式では地表の濃度を表現することができないことが指摘されているのである。被控訴人らは、控訴人が行つた拡散実験の現状を写真撮影したときに、煙突から排出された煙が真横に流れている場面を確認しているが、このことは、被控訴人らの右の主張が正しいことを裏付けている。

(二) 右報告書によると、昭和五九年八月二九日午前零時より同零時二〇分にかけてと、同日午前三時より午前三時二〇分にかけての二回にわたり拡散実験が行われているが、こうした真夜中でも、煙源からわずか一〇〇メートルしか離れていない場所において、トレーサーガスの濃度を検出している。平地においては、真夜中に大気が最も安定した状態となり、大気が上下に動くことはほとんどなく、煙源よりわずか一〇〇メートルしか離れていない所でトレーサーガス濃度が検出されることはありえないことであるから、右の事実は、本件焼却場の場所が平地とは掛け離れた特異な気象状況であることを示すものであり、したがつて、平地における計算式を使つて大気汚染濃度を推定することができないことを示すものである。また、右報告書によつても、塩化水素濃度が環境基準値ともいうべき〇・〇二PPMを上回つているところがある。

2  気象協会の特別観測報告書について

控訴人は、気象協会に依頼した秋季・冬季における本件焼却場操業による排出ガスの実際の拡散状況の観測結果によれば、二酸化硫黄、二酸化窒素及び塩化水素について、すべて環境基準及び公害防止協定値以下であつた旨主張しているが、右報告書では観測時点における汚染物質の排出量が明らかにされておらず、これを検討することは不可能である。

3  環境アセスメントに関する控訴人の主張について

環境アセスメント法が現在なお法制化されていないのは、すぐれて政治的理由によるものであり、そのこととアセスメントの必要性とは別異の事柄である。被控訴人らは、受忍限度を越える公害発生の蓋然性について、被控訴人らの現地調査の結果から、本件焼却場地域の風向の変り方、ダウンドラフト、ヒューミゲーション現象の多発、煙流実験による煙の移動に伴う高濃度汚染の現象を明らかにし、また、本件焼却場から排出を予想される有害物質等についても特定した。これらのことから、本件焼却場の操業によつて排出される有害物質が、風向により、あるいはダウンドラフト、ヒューミゲーション現象により、高濃度汚染という公害を招来することが考えられることは明白であり、被控訴人らは、こうした事実を踏まえて環境アセスメントの不備を論じているものである。控訴人の主張は、公害防止装置の強化をもつて環境アセスメントに肩代わりさせようとするものにほかならず、ごみ焼却場が自然環境と無縁なものとして存在しえないばかりか、公害は自然の気象現象等によつてもたらされるものであることを看過するものである。

三  証拠関係〈省略〉

理由

一控訴人は、小牧市及び岩倉市がごみ焼却場の設置及び維持管理並びにこれらに附帯する事務を共同で処理するため、地方自治法二八四条一項に基づいて設立された一部事務組合であり、昭和五七年二月二日ころから原判決別紙物件目録(一)記載の土地上に同目録(二)記載のごみ焼却場(本件焼却場)の建設工事を始めたこと、また、被控訴人らが本件焼却場の南方約四〇〇メートルないし一五〇〇メートルの範囲に位置する小牧市野口区内に居住している者であり、そのうちの大部分が同区内に土地・建物を所有していることは、当事者間に争いがなく、そして、本件焼却場が昭和五九年三月に竣工をみたことは、弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。

二差止請求権の根拠・要件に関する当裁判所の判断は、原判決C三丁表三行目から同丁裏二行目までの説示と同一であるから、これを引用する。

三そこで、被控訴人らにおいて、本件焼却場の操業差止めを求めることができるかどうかを検討する。

ところで、保全処分判決に対して上訴がなされた場合に、上訴審が判決をするについての判断の基準時はその口頭弁論終結時と解すべきであり、そして、本件焼却場が昭和五九年九月二四日に試運転を始め、同年一二月二二日から本操業を開始したことは弁論の全趣旨に徴して明らかであるから、被控訴人らが、右操業状態によつて、現に社会生活上一般に忍容するのを相当とする限度を越える健康被害等の生活利益の侵害を蒙つているか、あるいは今後において蒙る蓋然性が高いかが考察されなければならない。しかして、この点につき、〈証拠〉中には、本件焼却場の操業後、被控訴人らの住居地域には時折悪臭が流れ、例年になく蠅も多く、あるいは五〇ホンを越える騒音に襲われることがあるなどという記載、供述が存するけれども、一方において、右尋問の結果によつて認められるように被控訴人らが生ごみを各戸から自主回収し、「実験小屋を作つてそこで堆肥化するという運動」を続けているとの事実、これに後に認定する事実関係を併せ参照すると、これら記載、供述にみられる事象自体、そのすべてが直ちに本件焼却場の操業と相当因果の関係にあるものとはたやすく認められないところであり、ひいては、これら事象により被控訴人らにおいて現に受忍すべき限度を越える生活利益の侵害を蒙り又は将来蒙る蓋然性が高いとの事実も認め難いというほかはない。また、〈証拠〉はいまだ叙上の事実を推認するに足るものではなく、そして、本件において他に右事実を疎明すべき資料を見出すこともできない。すなわち、

1先ず、本件焼却場から排出される蓋然性のある有害物質及びこれが人体に与える影響についての当裁判所の判断は、原判決C四丁裏一行目から同C六丁表七行目までの説示と同一であるから、これを引用し、これに対する本件焼却場の燃焼施設及び公害防止装置の概要についての当裁判所の認定は、次に訂正、付加するほかは、原判決C六丁表九行目から同C一三丁裏一〇行目までの説示と同一であるから、これを引用する。

(一)  原判決C六丁表一〇行目、同C九丁裏八行目、同C一二丁表六行目、同丁裏七行目及び同C一三丁表三行目の各「湧井」をそれぞれ「涌井」に改める。

(二)  同C七丁表二行目及び同C八丁裏四行目の各「九〇〇度」を「九五〇度」にそれぞれ改める。

(三)  同C一〇丁表六行目の「右湧井証人」から八行目の「認められるから、」までを次のとおり改める。

「作成の方式・趣旨により原本の存在・成立を認める疎乙第一〇四ないし第一〇六号証、同趣旨により成立を認める疎乙第一〇八ないし第一一〇号証、第一一二号証の一、二、第一一三号証及び控訴人主張のような袋であることは被控訴人長谷川由一を除く当事者間に争いがなく、右長谷川由一との間では弁論の全趣旨によりこれを認める疎乙第一一一号証の一ないし三を総合すると、小牧市においては昭和五九年七月から、岩倉市においては昭和六〇年一〇月から、それぞれごみ袋を指定して分別収集を強化し、市民に対する広報活動によりその徹底に努めていることが認められるから(これに反する当審における被控訴人篠田徹本人の供述は採用し難い。)、」

(四)  同C一〇丁裏九行目から一〇行目にかけての「この点に関して」を「しかしながら、小牧、岩倉両市が分別収集の強化を期していることは前認定のとおりであり、この点を措くとしても、」に改める。

(五)  同C一三丁裏六行目の末尾に、行を変えて、次のとおり加える。

「(7) 弁論の全趣旨により控訴人主張のような写真綴と認める疎乙第一〇一号証によれば、本件焼却場には、燃焼に伴う排出ガスを常時監視するため、煙道に窒素酸化物及び二酸化硫黄排ガス分析計と塩化水素及び酸素濃度分析計が取り付けられ、排出ガスを二四時間連続測定して、三〇秒ごとにその計測値を中央制御室に電送し、デジタルで表示する仕組みがとられ、作業員は、表示された排出ガス中の右各物質の濃度をチェックしながら各装置の稼働状況を監視するとともに、本件焼却場の煙突頂部に設置された温度計によつて、常時排出ガスの温度を計測し、また、モニターテレビで煙流の状況を監視する体制になつていることが認められる。」

(六)  同C一三丁裏七行目の「(6)」を「(7)」に改める。

2次いで、〈証拠〉によると、以下の事実が認められる。

(一)  控訴人は、昭和五九年八月八日、組合議会において、「住民の健康で快適かつ良好な環境を保全することを目的」とした「小牧岩倉衛生組合環境センターの公害の防止に関する条例」を可決して、同月一三日これを公布、施行した。右条例において、管理者は、本件焼却場の操業に伴う公害を防止するため「公害防止計画を策定する」ものとし(第三条)、これに基づいて、右八月一三日に「大気、水質、騒音、振動、臭気の排出等の基準値」及び「監視、測定等の方法」を定めた別紙のとおりの「公害防止計画」が策定、公表され、更に、本件焼却場の操業に伴う「公害の防止に関する重要な事項について審議し、必要に応じて意見を述べる」機関として、組合市(小牧、岩倉両市)の市民、学識経験者、組合市の職員及び組合の職員のうちから管理者が委嘱し、又は任命する委員で構成される「小牧岩倉衛生組合環境センター管理委員会」を設置し(第四、第五条)、管理者は、本件焼却場の操業に伴い「排出されるガス等が公害防止計画に定める排出等の基準に適合しなくなつたときは、速やかに操業を縮小し、又は停止する等必要な措置を講ずるものとする。」旨を定めた(第六条)。そして、上記委員会は、昭和六〇年五月、構成委員二〇名をもつて発足した。

(二)  控訴人は、昭和五九年一二月一五日、小牧市野口区、大山区及び林区との間に、それぞれ「地域住民の健康を守り快適でかつ良好な生活環境の保全を図るため」に、本件焼却場の操業に伴う公害の防止を目的とした「公害防止協定書」を取り交わしたが、右協定書においても、前記委員会の設置に関連して、委員の立入調査権、委員会で決定された事項についての尊重義務あるいは大気汚染等の定期的測定とその結果の委員会に対する報告義務(第二、第四条)等がうたわれるとともに、控訴人は、大気(排出ガス濃度、環境濃度)、水質、騒音、振動及び臭気について、いずれも前記公害防止計画と同一内容の「協定値を遵守する」(第三条)、この「協定値を超えた場合は、速やかに操業の停止、焼却量の削減等の必要な措置を講ずる」(第八条)、また、「組合市に対しプラスチック、乾電池等焼却不適物について、分別収集を徹底するよう要請する」(第一〇条)ことなどを約した。

3進んで、〈証拠〉及び弁論の全趣旨を総合すると、本件焼却場における試運転中を含む操業後の各種有害物質に関する濃度測定等の結果は、次のとおりであることが認められる。

(一)  排出濃度

(1) 控訴人は、操業後、本件焼却場内に設置された排出ガス自動連続測定装置によつて、本件焼却場から排出されるガス(誘引通風機出口のもの)中に含まれる窒素酸化物、二酸化硫黄及び塩化水素の濃度を常時測定しているが、昭和六〇年一月中の測定結果によると、これら物質の排出濃度は、その最大値が別表(4)記載のとおりであつて、同期間中、前記公害防止協定による協定値を越えたことがなく、総体的に協定値を大幅に下回つている。

(2) 控訴人は、右自動連続測定に加えて、月一回の割合で、株式会社公害環境センターに委託して、本件焼却場の煙突内の排出ガス濃度につき手分析による測定を実施しているが、昭和六〇年一月ないし三月分の測定結果によれば、ばいじんの濃度はすべて定量限界未満であり、二酸化硫黄、窒素酸化物及び塩化水素の各濃度も、すべて協定値を大幅に下回つている(最高値は、二酸化硫黄が一九・〇PPM、窒素酸化物が一二〇PPM、塩化水素が一九PPMである。)。

なお、排出基準値として、ばいじんについては、昭和四八年三月三〇日愛知県条例第四号(大気汚染防止法第四条第一項に基づく排出基準を定める条例)三条により、また、硫黄酸化物、窒素酸化物及び塩化水素については、大気汚染防止法三条一項、同法施行規則三条一項、五条二号、五条一号により、別表(1)下欄記載のとおり定められているところ、前記排出濃度は、いずれも右排出基準値をかなり下回ることが明らかである。

(二)  環境濃度

(1) 公害対策基本法は、政府は、大気の汚染等に係る環境上の基準について、人の健康を保護し、生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準(環境基準)を定める旨規定し、このうち二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質及び塩化水素の環境基準(ただし、塩化水素は目標環境濃度)については、同法に基づく環境庁告示、通達により、別表(3)の「環境基準値」欄記載のとおり設定している。ところで控訴人は、気象協会に委託し、昭和五九年九月二二日から一年間の予定で、本件焼却場から南南東約九〇〇メートルの地点に測定器を設置し、右各大気汚染物質について自動連続測定を実施したところ、昭和六〇年一月末日までの測定結果において、これらの濃度は、常に環境基準値及び協定値を大幅に下回つている(ただし、浮遊粉じんについては、昭和五九年一二月一日及び同月九日に一時環境基準を越えたことがあるが、これは本件焼却場が稼動していなかつた時にあたり、その後の昭和六〇年一月中の、一時間値の最高は、二酸化硫黄〇・〇二PPM、二酸化窒素〇・〇五PPM、塩化水素〇・〇〇四PPM、浮遊粉じん〇・一二mg/m3を示し、一日平均値の最高は、二酸化硫黄〇・〇〇九PPM、二酸化窒素〇・〇二三PPM、塩化水素〇・〇〇一PPM、浮遊粉じん〇・〇四五mg/m3である。)。

なお、右自動連続測定期間中には、同時に実施されている気象通年調査において、逆転層、弱風等が観測された日も含まれているが、かような気象状況の下においても、環境基準や協定値を越えることはなかつた。

(2) 控訴人は、気象協会に委託して、自動連続測定とは別に、年四回(春・夏・秋・冬)本件焼却場周辺の九地点(うち二地点は風向に応じ移動させる。)において、四八時間連続した環境濃度の調査を実施しているが、昭和五九年一一月一八日から同月二一日(秋期)に行われた二酸化窒素及び塩化水素の、また、昭和六〇年一月二三日から二四日(冬期)に行われた二酸化窒素、二酸化硫黄及び塩化水素の各測定結果によれば、これら物質の測定値は、すべて環境基準や協定値を大幅に下回つている(一時間値の最高は、二酸化硫黄が〇・〇一六PPM、二酸化窒素が〇・〇四七PPMを示し、一日平均値の最高は、二酸化硫黄が〇・〇〇四PPM、二酸化窒素が〇・〇二一PPMであり、塩化水素については、いずれも定量限界以下であつた。)。

(三)  水質、騒音、振動、臭気

昭和五九年一一月一九日から同月二一日にかけて実施された悪臭、騒音及び振動の測定結果、昭和六〇年一月一八日、同年二月二八日及び同年三月二七日にそれぞれ実施された放流水の水質検査の結果並びに同年八月二七日に実施された悪臭物質の計量結果は、いずれもこれらについて定められている環境基準や協定値を下回るものであつた。

四前項の認定に基づけば、本件焼却場の操業により被控訴人らが社会生活上一般に忍容するのを相当とする限度を越える健康被害等の生活利益の侵害を蒙り又は今後において侵害を蒙る蓋然性は髙いとの疎明はないことに帰するといわざるをえない。そして、本件では疎明に代る保証を立てさせて被控訴人らの申請を認容することも相当でないと認められる。

なお、被控訴人らは、控訴人が実施した環境アセスメントは極めて不十分であり、その実質は不実施にひとしく、この点から公害発生の蓋然性が裏付けられる旨主張するが、前述のように本件焼却場は既に操業を始めており、したがつて、現段階においては、右操業によつて現に受忍限度を越える公害が発生しているか又はこの現状から推して今後公害発生の蓋然性が高いか否かを考察すれば足りるというべきであるから、環境に及ぼす影響の程度、範囲などを事前に予測、評価するアセスメントの当否については、特にここで判断をしない。被控訴人らの本件焼却場建設の手続面に関する違法をいう主張についてもまた同様である。

五以上の次第で、本件焼却場の操業差止めを求める被控訴人らの仮処分申請(予備的申請)を認容した原判決は不当であるからこれを取り消し、被控訴人らの右申請を却下し、申請費用の負担につき民訴法九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官中田四郎 裁判官日高乙彦 裁判官三宅俊一郎)

別表(1)

物質

排出濃度

(一時間平均値)

排出基準

硫黄酸化物

三〇PPM以下

K値九・〇

容積濃度換算(一五〇〇PPM相当)

塩化水素

五〇PPM以下

七〇〇mg/N3

容積濃度換算(四三〇PPM相当)

窒素酸化物

一五〇PPM以下

二五〇PPM

ばいじん

〇・〇五g/N3以下

〇・二g/N3

別表(2)

測定値の濃度範囲

物質

日平均値

時間値

二酸化硫黄

(PPM)

〇・〇〇二~〇・〇〇八

〇・〇〇一~〇・〇一四

二酸化窒素

(PPM)

〇・〇〇三~〇・〇二三

〇・〇〇一~〇・〇五〇

浮遊粒子状物質

(mg/m3)

〇・〇一~〇・〇七

〇・〇一~〇・一六

別表(3)

汚染物質

大気汚染推定値(一時間値)

環境基準値

昭和五八年

一一月九日分

昭和五九年

八月二八日・二九日分

一時

間値

一時間値の

一日平均値

二酸化硫黄

(PPM)

〇・〇〇四七

〇・〇〇八〇

〇・一

〇・〇四

二酸化窒素

(PPM)

〇・〇二三七

〇・〇三九九

〇・〇四~

〇・〇六

浮遊粒子状物質

(mg/m3)

〇・〇〇七九

〇・〇一三三

〇・二〇

〇・一〇

塩化水素

(PPM)

〇・〇〇七九

〇・〇一三三

〇・〇二

別表(4)

計測項目

測定最大排出濃度

排出基準値

(一時間平均値)

一時間平均値

一時間値の

一日平均値

協定値

排出基準値

窒素酸化物

(PPM)

一三七

(三一日三時)

一〇一

(二五日)

一五〇

二五〇

二酸化硫黄

(PPM)

二六

(二一日一〇時)

一三

(一九・二一日)

三〇

一五〇〇

(相当)

塩化水素

(PPM)

四八

(八日一三時)

二五

(二六日)

五〇

四三〇

(相当)

公害防止計画

Ⅰ 大気、水質、騒音、振動、臭気の排出等の基準値

1 大 気

(1) 排出ガス濃度

項目

基準値

備考

ばいじん

0.05g/Nm3以下

1時間平均値

硫黄酸化物

30PPM以下

1時間平均値

窒素酸化物

150PPM以下

1時間平均値

塩化水素

50PPM以下

1時間平均値

(2) 環境濃度

項目

基準値

備考

浮遊粒子状物質

0.10mg/m3以下

1時間値の1日平均値

二酸化硫黄

0.04PPM以下

1時間値の1日平均値

二酸化窒素

0.04PPM~0.06PPM以下

1時間値の1日平均値

塩化水素

0.02PPM以下

1時間値の1日平均値

2 水質(生活排水)

項目

基準値

備考

PH

6.0~8.5

日間平均値

BOD

20PPM以下

日間平均値

COD

20PPM以下

日間平均値

SS

20PPM以下

日間平均値

大腸菌群数

3000個/cm3以下

日間平均値

3 騒 音

環境センター南側敷地境界線上で、昼夜とも50ホン(A)以下。

4 振 動

環境センター南側敷地境界線上で、昼夜とも60dB以下。

5 臭 気

項目

基準値

アンモニア

1PPM以下

メチルメルカプタン

0.002PPM以下

硫化水素

0.02PPM以下

硫化メチル

0.01PPM以下

トリメチルアミン

0.005PPM以下

二硫化メチル

0.009PPM以下

スチレン

0.4PPM以下

アセトアルデヒド

0.05PPM以下

備考  基準値は、2を除き、ごみ焼却施設及び粗大ごみ処理施設の稼動に直接起因する排出ガス濃度等に適用されるものである。

Ⅱ 監視、測定等の方法

1 大気

(1) 排出ガス濃度

ア 手分折

項目

測定方法

回数

測定場所

ばいじん

JISZ8808

年4回

煙突内の髙さ20m

硫黄酸化物

JISK0103

窒素酸化物

JISK0104

塩化水素

JISK0107

イ 自動連続測定

項目

測定方法

回数

測定場所

二酸化硫黄

JISK0103

連続

誘引通風機出口

窒素酸化物

JISK0104

塩化水素

JISK0107

(2) 環境濃度

ア 自動連続測定(操業開始から1年間)

項目

測定方法

回数

測定場所

浮遊粒子状物質

JISB7954のうち

環境庁告示に定める方法

連続

居住区域内の

1地点

二酸化硫黄

JISB7952のうち

環境庁告示に定める方法

二酸化窒素

JISB7953のうち

環境庁告示に定める方法

塩化水素

環境庁が定める方法

イ 定期測定(操業開始1年以降)

項目

測定方法

回数

測定場所

浮遊粒子状物質

JISB7954のうち

環境庁告示に定める方法

年4回連続

48時間測定

居住区域

内の地点

二酸化硫黄

JISB7952のうち

環境庁告示に定める方法

二酸化窒素

JISB7953のうち

環境庁告示に定める方法

塩化水素

環境庁が定める方法

2 水質(生活排水)

項目

測定方法

回数

測定場所

PH

JISK0102の12・1

年1回

排水口

BOD

JISK0102の21

COD

JISK0102の17

SS

環境庁告示に定める方法

大腸菌群数

下水の水質の検定方法

3 騒 音

ア 測定方法 JISJ8731

イ 回  数 年1回

ウ 測定場所 環境センター南側敷地境界線上

4 振 動

ア 測定方法 JISZ8735

イ 回  数 年1回

ウ 測定場所 環境センター南側敷地境界線上

5 臭 気

項目

測定方法

回数

測定場所

アンモニア

環境庁告示

に定める方法

年1回

環境センター

敷地境界線上

メチルメルカプタン

硫化水素

硫化メチル

トリメチルアミン

二硫化メチル

スチレン

アセトアルデヒド

6 気 象

項目

測定方法

回数

測定場所

風向・風速

風向風速計

連続

環境センター内の測定地点

温度・湿度

温湿度計

Ⅲ 公害防止対策

1 大気汚染防止対策

ばいじん、塩化水素及び硫黄酸化物対策として、これらの最大発生量に応じた容量及び能力をもつた高性能電気集じん機及び有害物質除去装置を設置する。

なお、窒素酸化物対策としては、自動撚焼温度制御装置を設置する。

2 水質汚濁防止対策

(1) ごみピット汚水は、炉内噴霧焼却により蒸発処理とする。

(2) 工場汚水(洗車排水、場内洗浄水等)は、排水処理装置にて処理後循環再利用し原則として放流しない。

(3) 生活排水は、高度処理施設により処理した後放流する。

3 騒音防止対策

(1) 騒音源となる機器類は、工場内の密閉した専用の鉄骨鉄筋コンクリートの部屋に収納する。

(2) 破砕機棟は、工場棟と一体構造とし、さらに本体を頑丈な基礎に固定させ内壁は吸音材を使用した遮音壁で囲む。

4 振動防止対策

施設から発生する振動は、十分な厚さのコンクリート基礎に防振ゴムを固定させその基礎は、建物の基礎と分離し振動の伝播を防止する。

5 臭気防止対策

(1) 建屋を密閉構造とし、ごみピット室内の空気を焼却炉で撚焼する。

(2) ごみの投入ステージに電動シャッター及びエアーカーテンを設置する。

6 焼却灰等の措置

焼却灰、EP灰等の廃棄物は、二次公害が発生しないよう敷地外へ搬出し適正に埋立処理する。

7 運搬車両上の措置

管理者は、組合を組織する市(以下「組合市」という。)と緊密に連携し次の各号について指導強化を図るものとする。

(1) 環境センターに搬出入するごみ収集車の洗浄及び消毒の実施に関すること。

(2) ごみ収集車からごみが飛散したり、汚水が漏れたり、悪臭が発散しないよう十分な対策を講ずること。

8 分別収集

管理者は、環境センターの円滑な操業を図るため組合市に対し不撚ごみ、埋立ごみ、粗大ごみ、資源ごみ、乾電池等焼却不適物を分別収集するよう要請するものとする。

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